Parting tears
 タバコを吸い、煙をくゆらせていると、和哉がコーヒーを持って上がってきた。


「本当に来てくれるなんて嬉しいよ。俺夜勤だから、まだまだ終わらないんだけどさ」


 和哉は残念そうな顔をしていたが、私は一目会えて良かったと思った。


「下にいた同僚がさ、結麻のこと気に入ったらしくて参ったよ」


「私達より全然若そうだし、恋に恋する年頃なんだよ」


「そうかもな。じゃ、俺仕事戻るわ」


 そう云って和哉は階段を降りて行った。

 私は和哉が持ってきてくれたコーヒーを飲み、視線を窓の外に移すと、ビルのネオンが華やかで、妙に現実感がなく、私は目を閉じた。

 もう和哉と私は別々の場所にいるんだと痛感した。

 席を立つと階段を下り、和哉に声をかけた。


「和哉、頑張ってね」


「ああ、あまり話し出来なくてごめんな。気をつけて帰れよ」


 これが本当に最後だろうと思った。和哉もそう思っただろう。私達はきっと、もう会うことはないと……。

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