午前0時のシンデレラ
7.ガラスの靴
「え?柳がいない?」
あたしは食事の手を止める…こともなく、報告してきた執事をじっと見た。
「…あんたまさか、柳に上手く丸め込まれたんじゃないでしょうね?」
「ち、違います!屋敷の中をくまなく探しましたが、どこにもお姿が…」
「わかったわ。ありがとう」
物凄く焦っている執事を下がらせ、あたしは最後のパスタを飲み込んだ。
…ったく、どこ行ったのよ。
せっかく街に行こうかと思ったのに…運転手がいないんじゃ行けないじゃない。
下手くそな運転手だけど。
あたしはフォークをお皿の上に置くと、席を立った。
何しようかと考えていると、ポンと頭に考えが浮かぶ。
「…そうだ」
ポツリとそう呟くと、あたしは急いで部屋に向かった。
棚の中から、そっと袋を取り出すと、小さな鞄に詰め込む。
それを肩にかけ、窓を開けると、窓枠に足を乗せた。
今日は、風が心地いい。