午前0時のシンデレラ
「あ…れ?」
いつも、扉を開けたら真っ先に目に入る泉さんの姿が、どこにもなかった。
電気は付いてるし…扉に営業中の看板はあったし。
奥の部屋にいるのかと思い、名前を呼んでみた。
「泉さーん?」
…けど、返事はなくて。
不思議に思って首を傾げると、奥の方から何か物音が聞こえた。
「………」
まさか…泥棒?
でも、こんな森の奥にわざわざ!?
思わずその場に固まっていると、小さな声のようなものも聞こえてきた。
誰か…いる?
「どうしよう…」
怖くないって言ったら、嘘だけど。
でも、もしかしたら泉さんのピンチかもしれないし。
ただの泉さんの寝言かもしれない。
後者の方がいいと願いながらも、あたしは恐る恐る奥へと足を踏み出した。
泉さんにただ…会いたくて。
会って、気持ちを伝えたくて。
―――そう。
ここで、大人しく帰れば良かったのに。