午前0時のシンデレラ
乱暴に、お店の扉を閉めて外に出た。
きっとこんな音すら、あの人たちの耳には届かないんだろうけど。
「…バカみたい…!」
本当、バカみたい。
あたしは所詮、泉さんから見たら子供だったんだ。
最初から、恋愛対象にはされてなかった。
そんなこと…分かってたはずだったのに。
『―――――花蓮…』
あんな愛おしそうに誰かの名前を呼ぶ声を、聞きたくなんかなかった。
「………っ、」
堪えていた涙は、簡単にあたしの頬を伝った。
ただの失恋だったら良かった。
ちゃんと告白して、フラれたなら良かったのに。
他の誰かと身体を重ねる場面なんて…見たくなかった。
「……っ、泉さ…泉さん…!」
最初に魔法をかけてくれたのは、泉さんだった。
あたしの心を癒してくれたのは、泉さんだけだった。
あたしの王子様は、泉さんしかいなかったのに。
…泉さんのお姫様は、あたしじゃなかった。