午前0時のシンデレラ

少しだけ開いていた背後の扉が、ひとりでに閉まった。


その音に促されるように、柳の顔が徐々に近付いて来る。



…そういえば、初めから。


あたしは柳の瞳に吸い込まれそうだった。


そんなことをぼんやりと考えながら、迫って来る柳の瞳を見ていた。


早く。早くあたしを…



「―――アホか、お前」



………え?


あたしは、ぱちくりと瞬きを繰り返す。



目の前には、眉を寄せた柳の顔。


微かな痛みに視線を下にずらすと、つままれたあたしの鼻。


「…もう一度言う。アホか、お前」


柳はそう繰り返すと、あたしの鼻から手をはなした。


あたしは呆然と、ため息をつく柳を見つめた。


「…ぬ…な…」


「何だその顔。俺が本気でキスでもすると思ったのか?」


心底呆れたような視線を向けられ、あたしはカッと全身に血が昇った。


~何なの、何なの何なの!

何なのよこの男!


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