午前0時のシンデレラ
「…もういいや。帰って。っていうか、もう来ないで」
考えるのが面倒くさくなったあたしは、作り笑顔で手を振った。
「ひど!てか、お前が笑うとなんか不気味だな」
「………」
本っ当に、この男は。
いちいち人の気に障ること言うのが趣味なわけ!?
「笑うならもっと自然に…」
「はいはいはい出てってください」
柳の背中を押し、無理やり部屋の外へ出すと、ドアのぶに手をかける。
早くドアを閉めようと、手に力をこめたとき、柳と目が合った。
「―――また明日、な」
静かになった部屋に、ドアが閉まる音が嫌に大きく響いく。
ドアに寄りかかりながら、あたしは速まる鼓動に戸惑っていた。
…柳の瞳は、苦手だ。
今まであんな風にあたしを見る人は、いなかった。
裕福な家庭で育ったあたしに向けられるのは、妬みか、羨望か、下心か…気分が悪くなるような視線だったから。