午前0時のシンデレラ
9.心の鍵
―――覚えているのは、3つだけ。
優しい瞳と、
繋がれた手の温もりと、
ドキドキと胸を鳴らす心臓の音―――…
「…ありえないっ!」
あたしは目を覚ますと、勢い良く起き上がった。
「朝起きて最初の言葉がそれって、どうなんだよ」
押し殺すような笑い声が聞こえ、扉に視線を移すと、柳の姿があった。
その姿を見て、心臓が大きく跳ね上がる。
「…嫌な夢見たのよ、嫌な夢!」
本当は、夢なんかじゃないって、あたし自身が一番分かってるんだけど。
「へー、どんな?」
あまり興味が無さそうな口振りで、柳が扉を背に訊いてきた。
あたしはぐっと喉を詰まらせると、視線を床に落とす。
「す、数学の問題がいつまでたっても解けない夢っ」
「そりゃ夢じゃなくて現実だろ」
全く失礼な柳の言葉に、あたしは反論出来なかった。
…あたし、おかしい。