午前0時のシンデレラ
10.消えた魔法使い
「―――…樹里亜?」
柳の言葉に、ピクリと反応を示したのは、あたしの目の前にいる少女。
…あたしに驚くほどそっくりな、少女。
「…睦っ…、何で…!?」
ジュリアと呼ばれた少女は、ぎゅっと唇を噛みしめると、素早く立ち上がった。
すると、すぐそばにいた男の人の手を取った。
「行きましょ、隼人」
「けど、樹里亜…」
「いいから!」
少女は男の人を引っ張りながら、足早に立ち去ろうとする。
…まるで、この場から逃げるように。
「……樹里亜!」
離れようとする彼女の腕を掴んだのは、柳だった。
「待てよ!俺、お前に言いたいことがっ…」
「はなして!あたしは睦に話すことなんか、何もないわ!」
その腕を振りほどこうとする少女に、必死にそうさせまいとする柳。
…睦?ああ、柳って睦臣って名前だったっけ。
なんて、この場に似合わない考えが思考を巡る。