午前0時のシンデレラ

…また、やってしまった。


柳が戻って来てからというものの、これといって甘い雰囲気になったことは皆無。


そんな急にベタベタになっても困るけど、乙女としては、それなりにイチャイチャしたかったりする。



…なのに、あの男。


キスどころか、手を繋ぐことさえしてこないのよ!?


「………はあ…」


もしかして、両想いっていうのはあたしの勘違いなの?


あの告白は、聞き間違いだった…?



じわり、と目頭が熱くなる。


考えるのも嫌になって、扉から離れようとした…そのとき。


「きゃっ!?」


突然扉が開き、あたしは後ろから伸びてきた腕に捕まえられた。


そのまま身体を抱き寄せられ、目の前で扉が静かに閉まった。


「…悪かったよ」


小さく呟かれた言葉が、耳をくすぐる。


あたしの心臓の鼓動は、徐々に速まってきていた。


「…っ、柳…」


久しぶりの柳の温もりに、あたしは戸惑った。


いざこういうことをされると、どうしたらいいのか分からなくなる。


< 195 / 200 >

この作品をシェア

pagetop