午前0時のシンデレラ
そう思ったときには、遅かった。
「……っ、バカじゃないの…」
いつの間にか自由になっていた口を開くと同時に、涙が頬を伝う。
ただ、悔しくて。
突き放しても、あたしに近づいてくる柳に、腹が立って。
「魔法なんて…いつかは解けるのよ」
シンデレラの魔法は、午前0時で解ける。
その途端、目の前の現実を突き付けられるの。
「そんなの、いらない…!」
普通の生活がしたかった。
普通に学校に通って、友達と遊んで…恋をして。
でもそんな普通のことは、あたしには始めから用意されていなかった。
―――解けてしまう魔法なんか、いらない。
「解けねぇよ」
「…え?」
耳を疑ったあたしは、顔を上げる。
柳はあたしの涙を拭うと、微笑んだ。
「シンデレラの魔法は、解けない」
自信満々にそう言った柳を見て、あたしは瞬きを繰り返す。