午前0時のシンデレラ
*‥‥‥‥‥
ガタンガタンと、不規則な振動が身体に伝わる。
横に流れていく景色を、あたしは窓から眺めていた。
そりゃあもう、不機嫌で。
「何だよ、まだ怒ってんのか」
「うるさい。運転下手くそ」
「…泣くぞ」
勝手に泣けばいい。
そうひねくれた言葉を心の中で呟きながら、あたしはぶすっとしたまま外の景色を眺める。
準備を終えたあたしに、柳は散々文句を言った。
しかも嫌みったらしく敬語で。
そのあと柳はあたしを無理やり車に乗せて、屋敷を出た。
車の中で聞かされた内容が、これ。
『外の街を知ること』
それはつまり、あの変な噂が飛び交う街に出るってわけで。
滅多に屋敷の外に出ないあたしにとっては、嫌がらせ以外の何物でもない。
すぐに車から脱出を試みたけど、そんなあたしの行動は予測済みだったのか、ドアにはしっかりと鍵がかけられていた。