午前0時のシンデレラ
呆れて返す言葉も出ないあたしに、柳は妖艶な笑みを向けた。
その瞳が獲物を捕らえようとする獣に見えて、体がすくんだ。
「あなたに魔法をかけてあげましょう。―――シンデレラ」
その言葉は、呪文のようにあたしの心に入り込んできて。
まるで解けない呪いをかけられたように、全身が硬直する。
ねぇ、シンデレラ。
あんたは魔法かけられたとき、こんな気分だったの?違うでしょ?
これから起こる素敵な出来事に、胸踊らせていたんでしょ?
「…やれるものなら、やってみなさいよ」
残念ながら、あたしは大人しく魔法をかけられたりしない。
自分一人で何だってできる。
「あんたの魔法なんか、かかるわけない。お断りよ」
挑戦的なあたしの態度に、柳は微笑んだ。
「逃げられませんよ…お嬢様?」
このときから既に、あたしは魔法をかけられていたことに…
―――まだ、気づかない。