午前0時のシンデレラ

「あたしはこの世界で、嫌でも生きてきたの」


笑いたくもないのに笑って。


下げたくもないのに頭を下げて。


「…こんな世界、壊れちゃえばいいのに」


小さく呟いた言葉は、柳に届いたのか分からない。


柳はポケットからハンカチを取り出すと、あたしの口元を拭った。


「ケチャップついてますよ。お恥ずかしい」


「あらそう。柳もつける?」


「いえ、結構です」


柳はハンカチをしまうと、困ったように笑った。


ちょうどその時、会場の証明が落ち、どこからか音楽が流れた。


人々がざわめき始めると、会場の一点にスポットライトが当てられた。


「皆様、ご来場頂きまして、誠にありがとうございます。只今より舞踏会を開催したいと思います」


マイクを片手にそう言ったのは、池田のパパだった。


「どうか皆様、最後までお楽しみ下さい」


池田パパがお辞儀をすると、会場から大きな拍手が上がる。


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