午前0時のシンデレラ
スポットライトが消えると、会場の照明が再び明るさを取り戻した。
人々は近くにいる異性の手を取り、ゆっくりと踊り始めた。
「お嬢様」
あたしの目の前に、柳の手がスッと伸びる。
「踊っていただけますか?」
「…ケチャップ女だけどいいわけ?」
そう言うと、柳が笑う。
「―――はい。あなたがいい」
その瞳が優しくて、思わずドキッとした。
あたしはそっと、柳の手を取る。
柳は、踊りまでも上手かった。
踊り慣れているあたしでさえ、その動きに感心してしまうほど。
「お嬢様、どうかなさいました?」
「柳うざい」
即答でそう答えると、あたしは柳の足をわざと踏もうとした。
…けど、サラリとかわされる。
「そう何度も、踏まれる気はありませんよ」
「~っ、」
悔しくて、キッと柳を見上げたときだった。