午前0時のシンデレラ
頭上から降ってきたのは、小さな笑い声だった。
「…ちょっと。何笑ってんのよ」
顔を上げると、やっぱり柳は笑っていて。
あたしがじろっと睨むと、柳は口元を押さえながら喋りだした。
「や…すみませ…、怒鳴ったり落ち込んだり、忙しいなぁと」
「は!? バカにしてんの?」
「いえ、そんなわけじゃありません」
「…今更ピシッとしたって意味ないんだけど」
あたしはため息をつくと、視線を会場に移す。
会場を流れる曲は変わり、さっきよりも明るい曲調だった。
…あたしの心は、全く明るくならないけど。
「…お嬢様」
少し遠慮がちな柳の声に、渋々と視線を戻す。
「何。てゆうか敬語やめてくれない?」
「いえ、それは…」
「大丈夫だってば。誰もあたしたちなんか気にしてない」
「…分かったよ」
柳は折れると、僅かに苦笑した。