CruelRefrain
元々治安が悪いわけでもないアルトリアで、パトロール隊の仕事など、正直ないに等しい。
稀に気紛れを起こした窃盗犯などの捕縛任務があるくらいで、それもパトロールの目が光っていれば実行しようとする者も減る。
故に、カイルは不謹慎ながらも退屈を感じていた。
「一番街も以上なし……っと。ここまで平和だと、本当にこんなことが必要なのか疑問を覚えるね」
アルトリア城下町一番街の街道にて、カイルの呑気な声が響く。
彼とて非日常を望んでいるわけではない。
けれど、仕事として給料をもらっている以上は全力を尽くしたいという思いは人として当然、いやむしろ良いことだと言っていい。
それが結果として非日常を願うことに繋がってしまうのは、皮肉なものだが……
しかし、それを願おうとも願わずとも、日常は些細な出来事で、非日常に変わるものだ。
――場所は変わってアルトリア城内。
アルトリア城の地下には武器庫へと繋がる通路がある。
そこを歩く、アルトリア軍の軍服に身を包んだ一人の青年。
当然、警備の人間はそれを呼び止める。
「身分証明書の提示をお願い致します」
「アルトリア軍第三防衛部隊所属、クイール=シュレーベルです。部隊長より銃弾の補充を命じられて来ました。許可証はここに」
そう言って懐から取り出したのはアルトリアの軍人に配られるカードサイズのライセンスと、一枚の紙切れ。
警備の人間はそれを受け取り、青年から紙切れへと意識を変える。
故に気づかない。青年が、すべてを見下すかのような邪悪な笑みを浮かべていることに。