CruelRefrain
青年は武器庫への道を歩きながら呟く。
「こうもあっさりと騙されてくれるとは……これだから平和ボケした国は」
誰もいない通路にて、青年は不要となった軍服を脱ぎ捨てる。
その下にはアルトリア最大の強敵国、リグルスの軍人であることを示す軍服。
当然先ほど名乗った名前も、ライセンスも、許可証も偽造の物。
青年はある目的の為にアルトリア城内に侵入した、リグルスの軍人だったのだ。
「ここが武器庫か」
青年はそのまま、障害なく武器庫に到着。
懐に隠し持っていた拳銃で鍵を破壊後、中へと入って行く。
きちんと整理整頓された武器庫内には、多種多様の軍用武器や、爆薬、砲台など様々な物が詰め込まれている。
その更に奥に、アルトリアの軍証が刻まれた鉄製の扉が一つ。
青年は迷わずそれを開く。そこに青年の探し物が、リグルス軍が欲する物があると確信していたから。
「これが、暁の聖剣か」
そこに在ったのは一振りの長剣。
それは先の大戦にて劣勢だったアルトリアを救ったと言われている伝説の聖剣、『暁の聖剣』
「見た目は普通の長剣だな。切れ味は良さそうだが、伝承にあるような、『神の力』とやらを生み出す剣には……とてもじゃないが見えないな」
青年も先の大戦、クルーエル戦争には参加していたものの、実際に暁の聖剣が使用されていたところを見てはいない。
実際にそれが振るわれたのを見た者達は今、一人を除いてこの世にはいない。
今回この聖剣の強奪を青年に依頼したのは、唯一の生き残りであるリグルス軍の将、シガール=グランハーツ。
シガールの一存にて与えられたこの任務、元々乗り気ではなかった青年だが、実物を見ても納得などできるはずもなく、疑問は深まるばかりだ。