CruelRefrain
青年は武器庫に保管されていた暁の聖剣を手に取ると、それ以外は眼中にないようで、来た道を戻ろうとしたところであることに気づく。
「……おっと、銃弾を取りに来たことになっているのに、持っていなかったら怪しまれるな」
青年は閉じかけた扉を再び開き、袋詰めにされた長銃の銃弾を拝借してから、改めて武器庫を出て行った。
――同時刻、武器庫への通路入り口。
「交代の時間だ」
「ああ、ありがとう」
警備の交代時間。新たに派遣された軍人は引き継ぎの為に問う。
「なにか変わったことはなかったか?」
「いや、特に……第三防衛部隊所属の奴が銃弾の補充とかで中に入ってったくらいだ」
「そうか…………ん? ちょっと待て」
男は、警備員の証言に一つの疑問を抱く。
「確か、防衛部隊って第二班までじゃなかったか?」
「……あれ? ってことはさっきの奴は…………っ!?」
そこで二人は同時に気付く。
侵入者の存在に。
「そ、そいつはまだ中にいるのか!?」
「ああ、多分そろそろ戻って来る頃だと……」
振り返った警備員の目に移ったのは、脇に銃弾の入った袋を抱えた青年の姿。
その瞳には警戒の色。
そして、警備員の様子が入った時とは明らかに違っていることに、青年も気づいてしまった。
警備員の方はまだ、青年が侵入者だという確信を持っているわけではない。
青年が所属の部隊を言い間違えた。または警備員が聞き間違えたなどということは十分にあり得るのだから。
しかし、警備員達のそんな疑問は、危険を感じた青年の次の行動により、確信に変わることとなる。