CruelRefrain
(ちっ、気付かれたか)
警戒の視線を向ける二人の軍人を見て、青年は内心で悪態をつく。
場所は狭い通路。状況は二対一。青年は圧倒的に不利。
故に青年は、先手必勝。敵が戦闘体制を取る前に、強靭な脚力を持って前にいた軍人の懐に潜り込み、腰に差した長剣を抜刀。
その首を、一振りのもとに跳ね飛ばして見せた。
「ひぃっ!」
宙を舞う仲間の首。もう一人の軍人はその光景に、声にならない悲鳴をあげる。
青年は止まらない。
対抗する為、自らの剣を抜こうとする軍人の手を斬りつけ、そのまま流れるような動作で肩口から腰にかけての一太刀を浴びせる。
「ぐあっ! あ……あぁぁぁーっ!!」
身体中を走る激しい痛みに悶える軍人。正気を無くして通路を転げ回る。
それを見苦しいとでも言うように、青年は転がる軍人を踏みつけ、長剣を軍人の心臓部に突き刺した。
傷口から溢れ出し、広がる赤い池。
やがて、軍人だったものは、ピクリとも動かなくなった。
「かなり、返り血を浴びてしまったな」
死体の心臓部から長剣を抜き去り、何事もなかったかのように通路を出る青年。
赤に染まった長剣。返り血で汚れた軍服。
そんな目立つ格好をした青年をアルトリアの軍人が見逃すはずもなく、通路を出たところで今度は城内警備の軍人に見つかった。
「そこの貴様っ! 止まれ!」
警備の軍人に呼びかけられ、青年は再び足を止める。
「まったく……恨むなら、俺に出会ってしまった己の悪運を恨むんだな」
――その後の光景は、まさに悲劇と呼ぶに相応しいものだった。