大好きな君にエールを
荒ちゃんと冗談を言い合いながらシゲさんの病室に着いた。そして荒ちゃんがドアに手を掛けた時、
「…悔しいに決まってんじゃん」
中からシゲさんらしき声が聞こえてきた。あたしと荒ちゃんは顔を見合わせ、しばらく中に入らないと合図をした。
「悔しいよ、荒嶋にキャッチャーの座を取られて」
荒ちゃんがピタリと止まった。
「だって今まで俺が守ってきた花龍なんだ。それを…簡単に荒嶋に譲っちゃったんだ」
あたしは、俯く荒ちゃんの手を握りしめた。
「甲子園…行きたかった。試合にも出たかったな…。俺の憧れの場所だったんだけどなぁ。それに実貴とも約束してたのに…」
「シゲ…」
「…ごめん、な」
ガラッ
シゲさんの謝りの言葉と同時に、荒ちゃんがドアを開けた。
「こ、康也…」
「シゲさん、なんで…言ってくれなかったんですか?」
そう言って、荒ちゃんはシゲさんに詰め寄った。