大好きな君にエールを





「アウト!」


相手のグローブの中だった。花龍のスタンドから残念と言わんばかりの声が聞こえた。


3アウト、チェンジ。またしてもチャンスを逃した。せっかくのチャンスだったのに。2塁にランナーがいたのに。


俺は俯きながら花龍のベンチへ戻った。だけどグローブを片手にした永松は言った。


「最初の打席より断然よかった」


俺が驚いた顔をすると『交代だ』とキャッチャー防具を指した。


────…


それから6回、7回と過ぎていき


「三振、チェンジ!」


8回表もなんとか抑え、2−0のまま8回裏を迎えた。バッターは永松。永松は今日、全打席ヒットを打って塁に出ている。


「かっ飛ばす」


ボソッと呟いてバッターボックスに向かった永松の背中は逞しく、シゲさんの姿を思い出させた。


シゲさん…この試合を見てくれていますか?







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