大好きな君にエールを
俺は投げられた白球に吸い込まれるようにバットを振った。
カキーン…
今日、何度も聞いた爽快音だったが、今のが1番デカい音に聞こえた。
白球は太陽の光で見えなくなって気づいたら…
「やったー!!同点だぁ!」
「♪〜♪♪〜」
大きな歓声と甲子園に響き渡るメロディが聞こえ出した。そう、俺の打ったボールは、花龍スタンドへ入ったのだ。
びっくりしすぎて動けなかった。スタンドから聞こえてくる割れるくらいの声援とメロディにビビっているんじゃない。
自分のボールがあんなに遠く、遠くのスタンドまで運ばれたことに驚いていた。
「荒嶋ぁ!」
1塁コーチャーが回れ回れと腕を大きく振る姿が目に入り、慌ててダイヤモンドを駆け抜けた。
夢…じゃない、俺が打ったんだよな。俺自身がこの手で、あのスタンドへ…
“かっ飛ばしたんだ”