大好きな君にエールを
カキーン…
今度もセンター前。センターは懸命に走る。再びランナーがホームベースへ向かってくる。
…2度も同じことはさせない。俺はセンターからの白球をキャッチし、ランナーとほぼ同時にベースを踏んだ。
「ア、アウト!チェンジ!」
わぁっと盛り上がるスタンド。よかった…抑えたぞ。だけど、喜びに浸っているのも束の間だった。
「────…三振!試合終了!」
サイレンが響き渡る甲子園。3−2から花龍に追加点はなく、花龍は…負けた。
俺に打席が回ってくることも、キャッチャーが回ってくることもなかった。
整列をして熱烈な戦いをした相手と握手をした。
「荒嶋くん…だよな?2年のわりにはすごい腕前だな」
そんなことを言われても喜べず、自分の手にできたマメを見つめていた。
校歌が流れる。…もちろん花龍じゃない。