大好きな君にエールを





「んなこと言っても、俺は麻帆に会えないぞ」


冗談混じりで返すと、麻帆は『わかってるぅー』としょんぼりした声になった。


そんな声しないでくれよな。花龍を抜け出して、会いに行きたくなるじゃんかよ。


────…次に会った時は思いっきり抱きしめてやろう。


そんな淡い想いを抱いていた時だった。





「ねー麻帆さん、誰と話してるんスか?」





一瞬、呼吸(いき)が止まった。自分が何を聞いていたかも、自分がどこにいるかも忘れるくらいに。


電話口から麻帆じゃない男の声が聞こえたのは、聞き間違い…だと思った。


『ねー麻帆さん』って聞こえたのも、嘘だと思った。


「う、うるさい。大塚くんには関係ないじゃんっ」


麻帆が可愛く反発する姿が思い浮かぶ。大塚くんなんて呼び方…親しげじゃね?


何なんだよ。


誰なんだよ、大塚って。







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