大好きな君にエールを
あたしはさっきの荒ちゃんの言葉を思い出しながら、大塚くんに話した。
「彼氏にね、距離置こう…って言われちゃった」
そして、まるで言葉の余韻のように涙が溢れ出す。信じたくない。距離を置くなんてまだ信じたくないよ。
「麻帆さん」
大塚くんがあたしの頭に手を置いた。いつものあたしならすぐ払いのけた。だけどあたしは何も言わなかった。
優しすぎるんだよ、大塚くんの手は。
だから余計に涙が出ちゃうの、だから甘えたくなるの。
あたしは荒ちゃんへの淡い想いを抱きながら、何も言わず頭を撫でてくれる大塚くんの優しさに寄り添った。
最低な彼女だね。あ、もう彼女じゃなくなっちゃってるのかな?
あたし…荒嶋康也の彼女ですって胸張って言えなくなっちゃうのかな?
嫌だ…嫌だよぉ。
この優しすぎる手の温かさが、荒ちゃんだったらいいのに…。