大好きな君にエールを
「お父さん、今日は観戦に行くのよね?」
「あぁ。だから麻帆ちゃん達の指導は昼過ぎからになるんだが…」
「あ、大丈夫です!野球観戦に没頭してください!」
済まなそうな表情をするおじさんに慌てて返した。おじさんはそうするよ、と笑った。
おじさんは行ける、だけどあたしは行けない、と自分に言い聞かせた。
─────…
「やぁっ!」
手に握る竹刀が響く。あたしは乱れた剣道着を整えた。
「まだまだぁ!」
剣道着姿のおばさんが、竹刀を盾にしてあたしに向かってくる。あたしも負けじと向かった。
「ふぅ…ここらで休憩しよっか」
おばさんの声が天使の声に聞こえた瞬間だった。あたしはおばさんの隣に座った。ちなみに藍は部屋へ忘れ物を取りに行っている。
空を見上げる。今日は青空だな。甲子園の決勝には最適の天気だ。
「ねぇ…麻帆ちゃん、行かなくてよかったの?」
おばさんが、カランコロンと氷の音をがする麦茶を飲みながらあたしを見た。