大好きな君にエールを
4回表、相手の攻撃が始まった。1人目はなんとか抑えた。だが…
「ワーッ!!」
2打者目にはヒットを許してしまった。ガッツポーズをして、自分のスタンドを見上げる敵。俺は目を背けた。
大丈夫、まだヒットで得点は入っていないと自分に言い聞かせる。永松も帽子の鍔に手を置き、精神を整えていた。
「3番、ライト…」
アナウンスが強打者の始まりを告げた。俺に小さな緊張が走る。監督からのサインを読み、永松に送る。
「ストライク!」
とりあえず1つストライクを奪った。だけどまだ気は抜けない。何が起こるかわからない。
カキン…
「ファール!」
ひやっとした。ホームランの線を行くんじゃないかとハラハラしてきた。そしてそのハラハラが当たってしまった。
カキーン
バットの音からして、ボールが遠くへ飛び立つことを示していた。
…やられた。俺の心にはその言葉しか浮かばなかった。