大好きな君にエールを





目でボール追いかけながら、マスクを外す。レフトが激走してボールを追う。しかしボールは構わず延び続ける。



レフト取れ!ボールよ…スタンドに入るな!


だけど…


「っしゃー!!」


俺の切実な願いは叶わなかった。やはり目で追いかけるだけじゃ叶わなかった。


結果は、ホームラン。2−1と一瞬の間に逆転されてしまった。永松が入れた点は束の間の幸せとなった。


相手の歓声を聞きたくなかった。ガッツポーズなんて見たくなかった。


同時に暑さが俺を襲う。今日は猛暑日だ。…なんて心で呟き、目に入った汗を拭ってスタンドを見た時だった。




─────…あれ?




俺は目を疑い、もう1度目を擦った。…幻覚か?俺は今、見ていたスタンドを見つめ直した。



「う…そだろ…」



驚きと嬉しさが込み上げてきた。だってスタンドには…



──────…絶対にいるはずのない大好きな君がいたんだから。






< 473 / 526 >

この作品をシェア

pagetop