大好きな君にエールを
──side*麻帆──
ジリジリと照り尽くす真夏の太陽が、剣道着を着替えてくればよかったと後悔させる。
走る足を緩める。額の汗も何度拭っただろう。流れる汗は、あたしの荒ちゃんへの溢れる気持ち。
木陰で休憩をしたい気持ちは山々だけど、そんな時間があったら試合は終わる。
もう2度とない、甲子園での荒ちゃんの試合。絶対に見なければそれこそ後悔しちゃう。
「…よしっ」
あたしは再び重たい剣道着と共に足を速めた。一歩、一歩と踏み出すたびに脳裏には荒ちゃんが出てくる。
────…会いたい
それしか出てこない。
────…荒ちゃんの彼女でいたい
そう伝えたい。
視界に映る見慣れない交差点も、仲良く手を繋ぎながら歩く小さな子供もボヤけて見える。
ふと細い通りを見ると、同年代の男女2人が仲が良さげに寄り添っていた。同時に胸が締めつけられる。
────…今、すごく荒ちゃんに会いたいよ。