大好きな君にエールを
「ここかぁ…」
道に迷いながらも辿り着いた甲子園球場。初対面だね、甲子園。あたしは無意識に一礼した。
あたしの周りにはちらほら人がいたが、中から聞こえるメガホン、吹奏楽の演奏、歓声のメロディーが心に響く。
…あたしも観たい。胸の高鳴りを抑えきれず、球場の中へ進んだ。
方向も、どのスタンドかもわからない。だけど『花龍ー!』という声援が聞こえる方へ足を運んだ。
階段をかけ上がる。一段一段上るごとに青空の光が広がり、歓声が近くなっていく。
そして最後の段を上りきった瞬間思わず息を飲み込んだ。
─────…う、わぁ…。
言葉にできない感動だった。客席は全部埋まっているように見え、熱気も太陽の光だけじゃない。
真ん中のグラウンドでユニフォームを着た選手が、小さいながら動くのが見えた。
もっと間近で見たい…そう思った時だった。
「あれ?…麻帆ちゃん?」