大好きな君にエールを
試合は4回表が始まったばかり。バックスクリーンを見てみると、3回裏で花龍が先制していた。
もしかして荒ちゃんが…?と期待したけど、近くにいたシゲさんがあれは永松が入れたと教えてくれた。
永松くんってピッチャーだよねと自分に確認して、花龍の守備を見つめた。
マスクを付けたキャッチャーがピッチャーと話している。あ、あの仕草…荒ちゃんだ。荒ちゃんが試合に出てるよ。
あたしは胸がいっぱいになった。久々に見た荒ちゃんがカッコ良くて、荒ちゃんが試合に出てることが嬉しくって。
バッターがバットを振る。あ、ヒットだ。メガホンの音が試合を盛り上げる。そして…
カキーン
打たれた。あたしは思わず中腰になって腰を浮かせた。相手の打ったボールがどんどん伸びていく。
まるで、スタンドに吸い寄せられているみたいに…。
結果、ホームラン。荒ちゃんはマスクを取り、ボールが入ったスタンドを見つめていた。