大好きな君にエールを
遠くてわからないけど、荒ちゃんは悔しそうな顔をしているに違いない。
自分の指示のせいだって、自分自身を責めているのかもしれない。ダメだ…視界が歪んでる。泣いちゃだめだ、まだ終わりじゃない。
歪む気持ちを飲み込んだ時、荒ちゃんがこちらを見ていた。しかも二度見。
「アイツ、こっち見てんじゃん」
シゲさんが冷やかすようにあたしに言った。…あたしに気づいた?…まさかね。だけど、荒ちゃんはスッと視線を永松くんに戻した。
ほら、やっぱり気づいてない。気づくわけがない。暑苦しい剣道着を着た奴がいる、それくらいは気づいたかな?
悲しい。だけど仕方ない。あたしは荒ちゃんの彼女で彼女じゃないから。
だけどさ、エールは送らせて?荒ちゃんが勝てるように応援はさせて?
あたしは精一杯応援するよ。剣道着の暑さと日光で体が溶けたっていい。
気づいてもらえなくても荒ちゃんをずっと見つめて、声が枯れるまで荒ちゃんにエールを送るよ。