大好きな君にエールを





「んな顔しないでくださいよ」


大塚くんが一歩、また一歩近づいてくる。


「大塚く…」


「麻帆さん、もう1回だけ。あと1回だけ」


そう言って大塚くんはあたしを抱きしめた。あの時と同じ。優しく包み込むような感じだ。


あの時は、大塚くんの優しさに甘えてしまった。温かくて、安心した。


しばらく、無言だった。あたしは振り払うことが出来なかった。出来るわけがない。大塚くんが震えていたから。


「…ずっとずっと好きでした。俺…当分麻帆さんのこと、諦めきれないです」


勇気を出して言ってくれたのに、何も言えない自分が恥ずかしい。


「だけど、応援しています。彼氏サンとこれからも続いていくことを…」


スッと離れた大塚くん。途端に春風が舞い降りた。


「…好きな奴、出来たら報告します!」


走り去っていく大塚くんは、2つ年下だけど男らしくて、でもまだまだ子供らしい可愛さがあった。


ありがとう、大塚くん。あたしが言えるセリフじゃないけれど、素敵な人と出会えますように。







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