大好きな君にエールを
「ゲームセットッ!」
聞きたくない言葉だった。
「ホ、ホームラン……」
ベンチにいた補欠の先輩が呟いた。
キャッチャーを任されたシゲさんは、キャッチャーミットを付けたまま悔しそうに地面を見つめる。
他の先輩達も野球帽を深くかぶって歯を食いしばっている。
見たくない光景だった。
「荒嶋、行くぞ」
永松がボソッと声をかけた。
「ほら、整列だから行くぞ」
整列した時の相手チームの表情を見た。
嬉し涙を流している奴もいれば、ニコニコ笑っている奴もいた。
その姿を見たくなくて、俺は地面を睨みつけた。