大好きな君にエールを





「こっうやーっ」


そんな寂しさを吹き飛ばすような声が聞こえた。


「おぉ、春じゃん!」


春、本名は春貴(ハルタカ)。俺の一番の親友だ。


「康也と離れるなんて俺、超寂しいし。でも……野球頑張れよ!」


俺は県外の高校に行く。だから春とも他の仲間とも離れる。そして……麻帆とも。


それでも行きたい高校なんだ。俺は野球が好きだから。


スタメンに選ばれて、めっちゃ活躍して……そして




麻帆を甲子園に連れていく。




「荒ちゃんっ」



だから、麻帆の声をしっかりと耳に焼き付けんだ。


「愛しの彼女が呼んでるぞー」


隣から春が冷やかす。そんな冷やかしは無視。


「卒業おめでとっ。あのさ、一緒に写真撮ろ?沙月が撮ってくれるって♪」


目を涙で腫らしながらカメラを握りしめる麻帆。


「わーった。その前に……」


キョトンとする麻帆を前にして、俺はあるモノを乱暴に取った。



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