王国ファンタジア【氷炎の民】外伝~新生~
第6章 朴念仁
自分の手の下で黙ってしまった少女をレジアスは訝しげに見やった。
夏の日差しの下、元気そうに笑っていた彼女だったのに、今はやつれてしまったのか一回りは細くなったような気がする。悪戯っぽい輝きを放っていたはずの大きな瞳には憂いの影。まるみを失った顔が痛々しい。顔色は白いと言うか青白い。
その頬に不自然な赤みが昇ってくる。
「具合が悪くなったのか」
そのまま熱を測ろうと手を額へと伸ばす。
小さな子どもの世話に慣れた彼にとっては、なんと言うことない仕草だった。
けれど、メイリアの反応は過激だった。
「なっ、何をするのよっ!」
ぱしんと音を立てて、レジアスの腕が振り払われる。
二人の間に挟まれる格好のサレンスが驚いたのか、びくりと震えた。
「あっ」
自分の失礼な言動に気づいたのか、メイリアがうつむいた。
(そうか、嫌われていたっけ)
さすがに病後のせいか、今日はいつものように突っかかって来なかったので、つい安心していた。
嫌われていたのはわかっていたはずだったが、こうもあからさまだと妙に胸が痛い。
「サレンス様」
子どもの手を引く。
「今日はここまでにしましょう。あまり具合がよくはなさそうだ」
「うん」
子どもは困惑したような眼差しをレジアスとメイリアに投げたが、素直に頷いた。
「メイリア、また明日も来るからね」
サレンスの言葉にも返事は返らない。
少女はうつむいたままだ。
部屋を出て行きかけた頃、蚊の鳴くような小さな声がかかった。
「あっ、ありがとう」
夏の日差しの下、元気そうに笑っていた彼女だったのに、今はやつれてしまったのか一回りは細くなったような気がする。悪戯っぽい輝きを放っていたはずの大きな瞳には憂いの影。まるみを失った顔が痛々しい。顔色は白いと言うか青白い。
その頬に不自然な赤みが昇ってくる。
「具合が悪くなったのか」
そのまま熱を測ろうと手を額へと伸ばす。
小さな子どもの世話に慣れた彼にとっては、なんと言うことない仕草だった。
けれど、メイリアの反応は過激だった。
「なっ、何をするのよっ!」
ぱしんと音を立てて、レジアスの腕が振り払われる。
二人の間に挟まれる格好のサレンスが驚いたのか、びくりと震えた。
「あっ」
自分の失礼な言動に気づいたのか、メイリアがうつむいた。
(そうか、嫌われていたっけ)
さすがに病後のせいか、今日はいつものように突っかかって来なかったので、つい安心していた。
嫌われていたのはわかっていたはずだったが、こうもあからさまだと妙に胸が痛い。
「サレンス様」
子どもの手を引く。
「今日はここまでにしましょう。あまり具合がよくはなさそうだ」
「うん」
子どもは困惑したような眼差しをレジアスとメイリアに投げたが、素直に頷いた。
「メイリア、また明日も来るからね」
サレンスの言葉にも返事は返らない。
少女はうつむいたままだ。
部屋を出て行きかけた頃、蚊の鳴くような小さな声がかかった。
「あっ、ありがとう」