王国ファンタジア【氷炎の民】外伝~新生~
 サレンスとレジアスの主従が帰った後、メイリアは深々とため息をついた。

(またやってしまったわ)

 彼はサレンスがお見舞いに行くと言うから着いて来ただけなのだろうけど、折角来てくれたのだ。
 あんなに過敏に反応をする必要はなかったのだ。
 彼は心配してくれただけだ。
 サレンスの友だちの自分を。

(私は彼にとってはサレンス様のお友だちってだけだものね)

 そんなことはわかっているはずだった。
 でも、妙に優しくしてくれるからちょっとだけ期待してしまっていた。
 彼はほんとに何気なくメイリアに触れただけだ。
 なのに、過敏に反応してしまった。
 あげく、小さなサレンスにまで困った顔させてしまって。
 ほんとうに自分は最低だと思う。
 彼女は膝の上におかれたお見舞いの品の焼き菓子を見つめた。
 狐色にこんがりと焼き上がり、甘い香りを放つ。
 いかにも美味しそうである。
 しかも、彼女のためにレジアスが焼いてくれたものだという。
 でも。

(とても食べられないよ)

 もったいなさ過ぎる。

 後悔だか何だかよくわからない複雑な感情に、まだ14歳にしかならない少女は翻弄されていた。
 焼き菓子と小さな花束をベッド横のテーブルに移すと、彼女はふとんに潜り込む。
 明日も来てくれるのだろうかと、考えながら。
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