王国ファンタジア【氷炎の民】外伝~新生~
「着飾ったって仕方ないじゃない。どうせちょっとだけしかだめなのに」

 娘の言い分に母親はやけににっこりと笑った。

「そうね。また熱を出したら大変だし、だから送迎を頼んだの」

 母親の弁に不思議げな顔をするメイリア。

「送迎? 母さんじゃないの?」
「あら、私は父さんと踊りまくりよ。お前の相手をしている暇なんてないわ」

 笑顔を崩さず告げられて、メイリアはため息を落とす。
 子どもにとっては仲の良過ぎる両親のいうのも問題だった。
 肝心のところで、いつも子どもは二の次にされる。

「兄さん? でもヘルガと」

 兄を挙げてはみるが、彼は最近はメイリアの友達でもあるヘルガと仲がいい。祭りにも一緒に行く約束をしていたはずだ。

 メイリアの送迎をする余裕があるとはとても思えない。

「そうね。あの子に二人も女の子を世話する甲斐性はないわね」

 自分の息子を貶めるような発言を母親がしたとき、チリリと呼び鈴が鳴った。

「あら、おいでだわ」

 嬉しげに言うと、彼女は客人を迎えるべく身を翻した。


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