王国ファンタジア【氷炎の民】外伝~新生~
「母上は気に入らなかったのかなあ」
子どもは不満げにいう。
「そうみたいですね」
子ども部屋で仮装を解きながら、レジアスは口元から笑みがこぼれるのを止められない。
(かわいいと言いそうになってたみたいですけどね、あの人は)
すんでのところでやめたのは我が子の立場を思い出したのだろう。我が子であって我が子でないことを。
(可哀そうな人だ、そんなに気にすることでもないのに。この子はこの子なんだから)
「ほら、ちょっと黙ってて」
口紅をぬぐってやると、痛かったのか顔をしかめる。
「で、どうしてそんな格好していたのですか?」
「結婚式ごっこしてたんだ。メイリアが似合うからって。僕は花嫁役だって」
「そうですか。首謀者はまた彼女ですか」
メイリアはサレンスよりもずっと年上の女の子だ。前からよくサレンスと遊んでいた。と言うかサレンスで遊んでいた。今年十二になる彼女は年齢だけならまだレジアスに近いのだが、なぜかレジアスは彼女の眼の敵にされていて、顔を合わせるといつも突っかかってくる。レジアスは彼女を苦手としていた。
「で、花婿役は誰だったんですか?」
「うん、メイリアにケイトにジェリーに、えーと」
「みんな女の子じゃないですか?」
「そうだよ」
(どんな遊びをしてるんですか?)
またも額を押さえるレジアスに子どもはさらに頭を抱えさせることを平気で告げた。
「うん、僕もてもて」
(それはもてているとは違う、じゃなくて、またメイリアですか。そんな言葉を教えたのは。今度、話つけないと)
レジアスの決心をよそにサレンスはふわりと小さなあくびをした。
「眠くなったんですね」
「まだ眠くないよ」
「だめですよ。お昼寝の時間です」
軽々と抱き上げて、ベッドに放り込む。
不本意だと言いたげに、レジアスを凍青の瞳が睨み上げるが、その端から焦点が合っていない。睡魔が襲ってきたのだろう。やがて眼を閉じた。
子どもは不満げにいう。
「そうみたいですね」
子ども部屋で仮装を解きながら、レジアスは口元から笑みがこぼれるのを止められない。
(かわいいと言いそうになってたみたいですけどね、あの人は)
すんでのところでやめたのは我が子の立場を思い出したのだろう。我が子であって我が子でないことを。
(可哀そうな人だ、そんなに気にすることでもないのに。この子はこの子なんだから)
「ほら、ちょっと黙ってて」
口紅をぬぐってやると、痛かったのか顔をしかめる。
「で、どうしてそんな格好していたのですか?」
「結婚式ごっこしてたんだ。メイリアが似合うからって。僕は花嫁役だって」
「そうですか。首謀者はまた彼女ですか」
メイリアはサレンスよりもずっと年上の女の子だ。前からよくサレンスと遊んでいた。と言うかサレンスで遊んでいた。今年十二になる彼女は年齢だけならまだレジアスに近いのだが、なぜかレジアスは彼女の眼の敵にされていて、顔を合わせるといつも突っかかってくる。レジアスは彼女を苦手としていた。
「で、花婿役は誰だったんですか?」
「うん、メイリアにケイトにジェリーに、えーと」
「みんな女の子じゃないですか?」
「そうだよ」
(どんな遊びをしてるんですか?)
またも額を押さえるレジアスに子どもはさらに頭を抱えさせることを平気で告げた。
「うん、僕もてもて」
(それはもてているとは違う、じゃなくて、またメイリアですか。そんな言葉を教えたのは。今度、話つけないと)
レジアスの決心をよそにサレンスはふわりと小さなあくびをした。
「眠くなったんですね」
「まだ眠くないよ」
「だめですよ。お昼寝の時間です」
軽々と抱き上げて、ベッドに放り込む。
不本意だと言いたげに、レジアスを凍青の瞳が睨み上げるが、その端から焦点が合っていない。睡魔が襲ってきたのだろう。やがて眼を閉じた。