王国ファンタジア【氷炎の民】外伝~新生~
第3章 メイリア
 道端でようやくレジアスは少女を捕まえた。
 一緒に居た無駄にくすくす笑う年下の少女たちを先に行かせると、メイリアは道と農場を隔てる柵に身軽によじ登り、そこに腰掛け形のよい足をぶらぶらとさせる。

 彼女の華奢な肩の辺りで揺れる2本の細いお下げ髪は銀。彼ら、氷炎の民に特有の髪色だが、やや釣り上がり気味の大きな瞳は同じ青でも柔らかな青である。鼻の辺りにはそばかすが散り、顎は尖り気味であるが、否応なく人目を奪う愛らしさを持つサレンスとはまた違って、何となく眼が離せないような愛嬌があった。

 サレンスをあまり女の子扱いをしないで欲しいと頼むと、少女はレジアスを見下ろしてこうのたまった。

「あら、可愛らしくなくて? サリィちゃんは」
「サリィちゃん?」
「私たちの間ではそう呼んでるし、本人も気に入ってるみたいだし」
「どうして、また」
「そのへんの女の子よりずっと可愛いじゃない」
「メイリア、サレンス様は女の子じゃないよ」

 ひょっとして誤解しているかと思って言った言葉だったが、意外な答が帰る。

「そんなことわかってるわよ。でも、可愛いからいいじゃない」
「よくないよ」
「どうしてよ?」
「どうしてって」

 ちらりとメイリアの青い視線を盗みながら言いあぐねる
 彼女がサレンスの正体を知っているかどうかがよくわからなかった。知らなければ、このままサレンスと対等の付き合いをしてくれるだろうが、知れば彼の両親のようにサレンスを遠ざけるかもしれなかった。ようやくサレンスが見つけたレジアス以外の遊び相手でもある。
 当たり障りのないことを言う。

「男の子らしくなれないだろう」

 メイリアは不満げに口を尖らした。
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