王国ファンタジア【氷炎の民】外伝~新生~
第4章 乙女心
草原に子どもが二人。
10代前半の少女とその少女よりもずっと幼い子ども。
メイリアとサレンスである。
二人ともに銀の髪、蒼い瞳。
けれど、姉弟と言うほどは似ていない。
少女はややつり上がり気味の大きな瞳に尖った細い顎を持ち、どことなく気まぐれな猫を思わせる。対して、サレンスは幼くとも人目を引く華のある顔立ちである。
少女は色とりどりの花を編みこんだ冠を子どもの頭に載せてしみじみと言う。
「やっぱりサリィちゃんは可愛いね」
子どもは花冠の下で首を傾げる。
きまぐれな春風が、眉毛にかからない程度に切りそろえられた前髪をそよがせる。
凍てつく冬空を思わせる瞳を囲うのは銀の長い睫。
ほのかに上気した頬はまろやかな線を描き、鼻筋は通っている。
薔薇の花びらのような小さな唇が不満げに言葉をつむぐ。
「そうかなあ、レジアスも母上も気に入らないみたいだ」
少女のそばかすの浮いた小さな鼻に皺がよる。
己の薄い肩にかかる銀のお下げの片方を神経質そうに引っ張った。
「気にすることないわ。レジアスは焼きもち妬いているだから」
「焼きもち?」
「そう、自分がサリィちゃんのように可愛くないから」
子どもは凍青の瞳を瞠った。メイリアの言葉を彼の大好きなレジアスの悪口と受け取ったのだろう。必死な顔で弁護する。
「でも、レジアスはかっこいいよ」
「よくない。レジアスなんてサリィちゃんのおまけでしょっ!」
「レジアス、おまけじゃないもんっ!」
少女に一蹴されて、子どもの凍青の瞳がじわりと潤む。
10代前半の少女とその少女よりもずっと幼い子ども。
メイリアとサレンスである。
二人ともに銀の髪、蒼い瞳。
けれど、姉弟と言うほどは似ていない。
少女はややつり上がり気味の大きな瞳に尖った細い顎を持ち、どことなく気まぐれな猫を思わせる。対して、サレンスは幼くとも人目を引く華のある顔立ちである。
少女は色とりどりの花を編みこんだ冠を子どもの頭に載せてしみじみと言う。
「やっぱりサリィちゃんは可愛いね」
子どもは花冠の下で首を傾げる。
きまぐれな春風が、眉毛にかからない程度に切りそろえられた前髪をそよがせる。
凍てつく冬空を思わせる瞳を囲うのは銀の長い睫。
ほのかに上気した頬はまろやかな線を描き、鼻筋は通っている。
薔薇の花びらのような小さな唇が不満げに言葉をつむぐ。
「そうかなあ、レジアスも母上も気に入らないみたいだ」
少女のそばかすの浮いた小さな鼻に皺がよる。
己の薄い肩にかかる銀のお下げの片方を神経質そうに引っ張った。
「気にすることないわ。レジアスは焼きもち妬いているだから」
「焼きもち?」
「そう、自分がサリィちゃんのように可愛くないから」
子どもは凍青の瞳を瞠った。メイリアの言葉を彼の大好きなレジアスの悪口と受け取ったのだろう。必死な顔で弁護する。
「でも、レジアスはかっこいいよ」
「よくない。レジアスなんてサリィちゃんのおまけでしょっ!」
「レジアス、おまけじゃないもんっ!」
少女に一蹴されて、子どもの凍青の瞳がじわりと潤む。