Eternal Triangle‐最上の上司×最上の部下‐[後編]
「あれはね…? じつは彼の思い出の品だったのよ」
「…そんな大事なもの……でしたらお返しするように言いましょうか?」
麻由さんはやわらかく微笑みながら首を横に振る。
「私たちにはもう必要ないから」
「…必要ない?」
どういうこと?
「あのバングルの裏にね、ある文字が彫ってあるの。綾乃ちゃん知ってる?」
「…はい。あ、でも何が書いてあるかは…」
――実は福嶋くんが怪我をした日の朝に、
シャワーを浴びるために外したところを問いただしたんだよね。
『福嶋くん…それ…そのバングル使ってくれてたんだね?』
『ああ…うん。気に入ってる』
『…よかった。あ、ねぇベルナルドさんがお店に来たときにそれ見て何か言ってたでしょう?
宮下くんがわからない単語があったから後でメールするって。…あれって結局何だったの?』
『あーー…あれ? 別にたいしたことじゃないよ』
『…ほんと?』
『ほんとほんと。ただ裏側に文字が彫ってあって、それを教えてくれただけだから』
『文字? どんな?』
『…知りたい?』
『うん』
『何でも言うこと聞くか?』
『嫌( ̄― ̄)』
『じゃあ教えない( ̄― ̄)』
『何でよ! あたしがあげたのに! 教えてくれたっていいじゃない! ばかっ』
クッションを投げつけるけど、いい加減手の内がワンパターンであっさりキャッチされる。
福嶋くんはあたしの頭の上にぼすっとクッションを叩きつけると、いちど外してテーブルに置いたバングルを咥えて浴室に持って入った。
『覗くなよ? ヘ・ン・タ・イ』
『!!!? ばかっ…お風呂場で溺れちゃえ!!』