Eternal Triangle‐最上の上司×最上の部下‐[後編]
慌てて視界を遮っていたものを退けるとそれは福嶋くんの手で。
ついさっきまで間近に感じていた福嶋くんは、今は人一人分ほど間に挟んだ距離にいて。
あたしの口の中には…何かひらべったくて甘い…
口から飛び出していた棒をつまんでそっと引き出してみたら…
ペ●ちゃんキャンディー!!
「…ディープキスでもされたと思ったか?」
タバコをくわえながら余裕綽々の笑みを向ける。
その瞳は愉しげに細められていて、あらためて福嶋くんの底意地の悪さを思い知った。
「…ばかっ!」
もうっホントに知らないんだから!!
つんとそっぽを向き、怒りに任せて投げ捨てることのできなかった甘い甘いキャンディーを仕方なくというふうに口にする。
――ケンカすると決まって必ずくれるペ●ちゃんキャンディー。
福嶋くんはあたしの機嫌を損ねると、決まってあたしの好きなペ●ちゃんキャンディーでご機嫌をとる。
いつもそう…
今日はこんなので機嫌直らないんだから!
って思うのに、口の中に広がる甘い甘い味覚のおかげで感覚が麻痺し、いつしかイライラも怒りもおさまってしまう。
毎度のことだけど悔しい。
だけど…
たったこれだけのことで機嫌が直る、
そんなあたしの生態を熟知している福嶋くんを、たとえ許しがたい意地悪をされたとしても、あたしは本気で憎いと思ったことはないんだ――。