Eternal Triangle‐最上の上司×最上の部下‐[後編]
「店長、お客様ですよ?」
ひょっこり事務所に顔を出す斉木。
「客?」
「美人ですよ〜。マキタさんって方です」
「美人っ? どれオレにも見せろっ」
柏田は“美人”と聞くなり小躍りをやめ、血相を変えて飛び出していった。
…ったく、しょうがない奴だな。
それにしても…
「…マキタ」
…誰だっけ?
見当もつかないままに重い腰を上げ店に出ていく。
斉木に聞いてカウンターから少し離れた邪魔にならない場所にいた女性に声をかけた。
「こんにちは。僕に何かご用でしょうか」
マキタと名乗る女性は緩やかに巻いたキャラメルブラウンの髪をなびかせ、くるりと振り返った。
「…え…」
一瞬、頭の中が真っ白になる。
何で…
何でここに…?
だって確か…旦那といっしょにスペインに渡ったはずじゃ…。
「…前勤めていたお店に行ったら、こっちに移ったって教えてもらったから」
とても30代半ばとは思えない透明感のある肌に、まるでフランス人形のように形成された目鼻立ち。
少女のように可憐な微笑みは出会った頃と何も変わらない。
「マキタ…って?」
「旧姓。私、別れたのよ? ……小早川と」