Eternal Triangle‐最上の上司×最上の部下‐[後編]
『…そろそろ帰んなくていいの?』
ベッド脇のサイドボードの時計は“PM23:26”と表示している。
『…帰りたくない』
陽菜は拗ねたようにシミ1つない綺麗な背中を俺に向ける。
『旦那と喧嘩でもした?』
陽菜は黙って首を振る。
『…じゃ何?』
『……』
押し黙る陽菜。
心なしか震えているように感じた身体を後ろからそっと抱きしめた。
『…話せよ。何なら…朝までかかってでも聞いてやるから』
『……』
陽菜は心の整理をつけているのかしばらく黙った後、俺の縛(いまし)めをほどいてゆっくり振り返る。
その瞳には透明な涙があふれていた。
『陽菜…』
覆うように頬に触れ、零れ落ちそうな涙を親指で拭い取る。
陽菜とこんな関係になって3年、そういえば一度も陽菜の涙を見たことがなかった。