Eternal Triangle‐最上の上司×最上の部下‐[後編]



村瀬は見舞いに行ったり泊まりに行ったりしてたのにまったく感染していなかった。



「…バカは風邪引かねぇっつーもんな」



「何よバカ!」



「だから現に俺は風邪引いてるからバカじゃないって証拠だよ。バカバカ言うな」



「あたしだって風邪引くときは引くもんっ。関係ないもんっ。バカバカバカバカっ」



低次元な争いをしながら村瀬に自宅まで送ってもらった。



村瀬はいったん店に戻り、就業時間が終わってからまた俺の見舞いにやってきた。



何やらいっぱい買い込んで…







「りんご食べる? 剥こうか?」



「いやいい…これ食べてるし。それにおまえが剥いたら芯だけになりそうな気がする(苦笑)」



「そっ…そんなことないもん(ーεー)」



「…もう何もしなくていいから。おとなしくしてろ。な?」



「…ぅん」



村瀬はベッド脇にちょこんと座って質素なロコモコを食っている俺をじっと眺めていた。



「…ついてる」



村瀬の頬を親指でキュッと拭う。



醤油だかソースだか分からないけど黒い液体がついていた。



たったあれだけのことで指や腕には切り傷や火傷などの小さな生傷が増えていた。



不器用でも一生懸命で健気なところは許せてしまう。



何度失敗しても俺のために頑張ってる姿はとても愛おしかった。





「…ありがとな」





頭をやさしく撫でてやると、自分の不甲斐なさにまた涙が込み上げてきたのか村瀬は涙目になった。



「…ったく(笑)」



前は村瀬に限らず女の涙は面倒クサいって思ってた。



けど今は違う。



面倒クサいと思っていたことが愛おしい。



不器用な一面も泣き虫なところも、



ただただ優しく包み込んであげたいと思うほど、






愛おしくて愛おしくてたまらない――。












次章≫≫≫感染の温度
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