Eternal Triangle‐最上の上司×最上の部下‐[後編]
「…もうっ! 何なのよ! ばかっ」
どきどきしたじゃない!
怒り狂って振り上げた手を振り下ろす、すんでのところで引っつかまれる。
「もぉ━━━━(≧ヘ≦)」
力を振りしぼって何とか腕を振り下ろそうとするけどやっぱり男の人の力には敵わない。
「沖縄、行けなくしてやろうか」
あたしの腕を引っつかみながら突拍子もないことを言う福嶋くん。
沖縄に行けなくする? この腕でもへし折る気?
「つかマスクしろっつっただろ」
振り上げた手とは反対の手に持っていたマスクを取り上げられ、有無を言わせず装着される。
何よ…さんざんバカは風邪引かないって言っておいて(=`ロ´=)
「…村瀬」
また妖艶な視線に囚われる。
この瞳にはどうしても抗えない。
どうあっても逆らうことができない重力みたいに吸い寄せられる。
「…好きだよ」
…分かってる。分かってるよ。
「――…おまえを苛めんのが」
ちゃんと分かってる。痛いほど分かってる。
でも苦しいの。苦しくて切なくて悔しくて。
福嶋くんに優しくされるたびに嬉しくて…
『…ありがとな』
大きな手で優しく頭を撫でてくれる。
完璧じゃない出来でも、一生懸命作ったからって、けっして美味しくないはずなのに、見た目だって良くないはずなのに、食欲なんてないはずなのに、それでも福嶋くんはあたしが作ったものを残さず食べてくれた。
料理とは言いがたいけど、初めてあたしが誰かのために作った料理を、『まずい』なんて一言も言わないで優しい顔をしながら全部食べてくれた。
福嶋くんの優しさが身に染みる。
福嶋くんに優しくされると温かいものが胸いっぱいに広がる。
福嶋くんの手に優しく頭を撫でられると涙が込み上げてくる。