Eternal Triangle‐最上の上司×最上の部下‐[後編]
『…福嶋くん…あたし…自分でもどうしちゃったのか…訳が分からない…』
優しい瞳の福嶋くんが涙でぼやける。
福嶋くんを好きなわけじゃないのにマスク越しとはいえキスを受け入れた。
翻弄され、されるがままになって、溺れて、あげくの果てには2人の邪魔をする隔たりなんて要らないとさえ思ってしまった。
『…あ……あたし…』
あたし…どうなっちゃったの…?
涙がボロボロとあふれてくる。
その涙を、あふれるたびに優しく親指で拭い取ってくれる福嶋くん。
『…あたし…』
『――…さっさとフラれろよ』
『…え』
フラれろ…?
『何を…言ってるの…?』
『…さっさと西崎さんにフラれてこいよ。
そしたら――俺が惚れてやるから』
『…な…何言っ…』
そんなこと言ってただあたしをからかってんでしょ?
面白がってやってんでしょ?
苛めたいだけなんでしょ?
『冗談やめ…』
『冗談じゃねぇよ』
射抜くように見つめられる。
『冗談でこんなこと言わない』
まっすぐな眼差し。
嘘偽りのない瞳。
真剣な表情。
『…さっさとフラれちまえ』
ふわりと抱きしめられる。
『それで…きれいさっぱり吹っ切って…
おまえはおまえが本当に進みたかった道へ進め。
俺はおまえを縛りつけたりしない。
俺なら、もっと広い世界に飛び立つことができる翼を持ったおまえを…
翼を折って5年も縛りつけたままになんかしない――…』