Eternal Triangle‐最上の上司×最上の部下‐[後編]
「…村瀬?」
「…えっ?」
はっと我に返ると目の前には心配そうな西崎さんの顔。
「やっぱり今日のおまえ、変だぞ…?」
「…あ」
あたしったらまたぼーっとしてた。
こんなんじゃ西崎さんに失礼極まりないじゃない。
「…ごめんなさい」
西崎さん、いい加減呆れちゃってるよね…?
申し訳なくて頭を下げたときだった。
「…何だかここのテーブルだけ北の国みたいに温度が低いな。お〜寒い寒い」
あたしたちのテーブルにバーテンダーの格好をした男の人がやってきた。
背が高くて姿勢がよくて育ちの良さがそこはかとなく滲み出ているのに、整った顔立ちに涼しげな目元と頬ヒゲを生やしていることからワイルドさも兼ね備えている。
芸能人でいうと竹●内豊にちょっと似ているかな?
この人はこのバーレストランのオーナーで西崎さんの知り合いの佐渡晴巳‐サワタリ ハルミ‐さん(年齢不詳)。
だって『もういいオッサンだから』と教えてくれなかったから;
オジサンって謙遜するわりには全然20代でもいけそうなほど若く見えるのになぁ。
でもまぁ多く見積もってもせいぜい30代後半だよね。
「どうぞ」
佐渡さんがあたしの前にサーモンピンクのカクテルが入ったタンブラーを置いた。
「わぁ、可愛い♪」
「頼んでませんけど?」
怪訝そうに佐渡さんを見る西崎さん。
「オレからのおごり。西崎のはちゃんと金とるけどな」
「マジっすか」
佐渡さんは西崎さんの前にも飴色のお酒が入ったグラスを置いた。