Eternal Triangle‐最上の上司×最上の部下‐[後編]
「…急にこんな話して、引いたよな?」
「…いえ」
嘘。
心の中ではショックが大きい。
でも西崎さんに正直に言えるはずがなくて、力なく微笑み返す。
「それからこれは…福嶋にも話して驚かれたんだけど…」
西崎さんは伏し目がちに話しながら言葉を濁す。
「昔、女性関係が派手だった時期もあった。
結婚していた女性と――不倫をしていたことも、過去にはあった」
「……え…」
「あまりプライベートなことを他人に話すのは好きじゃないから、今までこんな話、柏田ですらしたことなかった。
だけど、あの張り込みの日に福嶋にも話して、何でか村瀬にも聞いてもらいたいって思ったんだ」
西崎さんのまっすぐな瞳を複雑な思いで見つめる。
西崎さんが、女性関係が派手だった…?
結婚していた女性と不倫してた…?
「…俺は恥ずかしい話、恋愛と呼べる恋愛をこの年になるまで一度もしたことがないし、特別誰かを心底愛したこともない」
――特別誰かを心底愛したこともない。
「…嘘。だって…優花さんは…?」
優花さんはどうなるの?
「…やっぱり村瀬は優花を知っているんだね?」
「え…あ…」
「…教えてくれないか? どういうルートで知ったのかを」
西崎さんは穏やかな眼差しであたしを見つめる。
その瞳は責めたりする風でも尋問したりする風でもなく、気軽に相談にでも乗ってくれるようなラフな感じがしたので、あたしは小早川さんに出会ったことから順序立ててゆっくりと話した。